泥クサク 美シク。

舞書家Chad.の徒然。日常の泥くささもすべてアートであり表現だと思っています。

大切なことは、手遅れになる前に。

脳卒中でたおれたおじいちゃんの
お見舞いにいってきた。


「ほら、おじいちゃん、ひとみちゃんが来たよ」
とおばあちゃんか言うと


おぼつかない瞼をあけて

 

わたしを見て、微笑んだ。

 

グローブの巻かれた手を
おかえりと言うように、"やぁ"と挙げた。

.

小学生のころ祖父の些細な一言がキッカケで


それから十何年も 避けて


口も利かなくなってしまったわたしは


十何年かぶりに、
まともに祖父の顔をちゃんと見た。

.

白いフワフワの髪にほっぺは赤く


細くて小さい体の「おじいちゃん」になっていて


酸素マスクと点滴につながれていた

.


立ち尽くしてわたしは言葉が出ずに

 

がまんできずに
なんだか涙が出た。

.

わたしが祖父を無視しつづけた十何年間

 

それでも

 

実家に帰るたび 祖父は
「ひとみちゃん おかえり」
と笑顔で話しかけてきた

 

毎回、毎年

.

わたしは


小学生のころの何がキッカケだったかすら
もはや覚えていないのに


反応的に避けて 煩わしく感じて

 

一度キライになった祖父の

 

顔を見ることも
話しかけることも
同じ空間にいることも

 

嫌だった。

 

それまでは大好きだったはずなのに。

 

どれだけ父やおばあちゃんに
「血の繋がっとる家族じゃのに」と怒られても
家族って言葉がクサくてむず痒くて嫌で、

頑なに拒み続けた。


.

病院のベッドに横たわって言葉がまともに喋れなくなっても

 

祖父の
わたしを受け入れる態度は 変わらなかった


.


去り際になって

 

ほぼ小学生ぶりに、
自分からまともにしゃべった。


「4/8、高知で舞台でるけど、来る?」

 

短い文章だけど おばあちゃんが泣いた。

 

「おじいちゃん、和太鼓じゃって。
ひとみちゃんがすごい舞台に出るんじゃと。」

 

.

これまで大きなステージに出ることがあっても地元での出演があっても

 

何も誘わなかった

 

でも今回は 誘ってもいいなと初めて思えていた

 

そんな矢先の 脳卒中の知らせだった

.

もう少し早く

 

勇気出して電話していたら
彼は倒れることはなかったんだろうか

.

和太鼓と踊りはすごいパワーなのだ

 

生きるパワーになるのだ

 

高知に家族旅行がてら来たらいい


十何年ぶりの家族旅行をプレゼントしてもいい

 

そう思ったのだ

.

だけど

 

彼は首をプルプルと横にふった

 

いまの自分にはいけないと思ったんだろうか


.

病室にいた時間の9割は
わたしは部屋の隅に突っ立っていた


おばあちゃんが、
優しく話しかけながらおじいちゃんの
身体をさするのを、ただ見ていた。


そんなシーンを、初めて見た。

 

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「嫌じゃねえ、もうちょっとの辛抱なんじゃけ
良うなるんじゃけ もうちょっとよ」

 

家に帰ると夜も眠れずやつれているのに

そのときはおじいちゃんを気丈に励ますのだ

 

普段みていたやりとりとは違う
おばあちゃんの優しさと愛を感じた

.

ああそうか、

 

若かったときには愛し合った"夫婦"
なのだと、初めて感じた。

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滞在時間 30分ほど

 

高知に向けて帰らなければならない時間がきた

.


握ったことのない
手を
初めて握った。

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頑丈に巻かれたグローブの上から
手を 確かめた


細くて小さくて 骨ばった指だった

.

「元気になってね」

思わず口から出た言葉だった
.

おばあちゃんは


さっきよりも もっと泣きながら

「アンタ、早よ行きんさい!」と言った


.

わたしが病室を出るとき

 

そのグローブごしの不自由な手を
いつものようにバイバイと振っていた。

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(あとがき)

 

マタニティペイントで実家に帰ったタイミング。

 

帰る数日前に倒れたらしい。

 

これから産まれる命と若い夫婦に接して
脳卒中のおじいちゃんと看病するおばあちゃんに接し。

 

マタニティペイントを通して新しい命が
わたしを 長年 目をそむけ続けた祖父に
ちゃんと会い直す機会をくれたのかもしれない。

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父は

 

「お父ちゃんが倒れても見舞に来るなよ
守るべき男が先に倒れたら申し訳なくなる」

 

と わたしを送りだしたけれど

 

そんなのは到底わたしにはできないだろう

 

「身体ちゃんと休めてがんばりんさいよ」
って言葉で その日高知に戻ってすぐの
レッスンだってがんばれるのだ

.

舞台は亡くなった実在の少年の物語。

 

生と死、魂、そんなのをテーマに
わたしたちは踊りで表現している。

 

おじいちゃんへの気持ちは
この表現にまたひとつ昇華させよう

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ps.
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●04/08 (日)
第70回高知市文化祭開幕行事
舞台『土佐の息吹』〜鼓童と舞踊による芸術の融合〜

@高知市文化プラザ かるぽーと大ホール
http://tosanoibuki.jimdo.com

①OPEN13:00 START13:30
②OPEN17:30 START18:00

※舞書ではなくスガジャズダンススタジオの踊り子の1人として出演です
※世界的和太鼓チーム 鼓童さんとの共演
※※チケット発売中🌟前売り4000円